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ピーチ
しかしすぐさまピーチはケロッと表情を変えた。
「フフゥン、じゃァダーリン。チップ弾んでェ」
またピーチは大幹部に抱きついて甘えた。
「なんだ。長老からチップを貰ったんだろう。オレからも取るつもりなのか?」
「フフゥン、妬かないの。ダーリンにも
「あッ、ああァ」
さすがの大幹部も美少女に甘えられると笑みがこぼれた。ほんの3ミリほど口角が上がった。
「ほらァ、チップの1万円札を口移しでェ」
相変わらず、ピーチはおねだりが上手い。
目白の闇将軍からたんまりボーナスを貰ったのに、まだ大幹部ダークネスからもチップをいただくつもりなのか。
「わかったよ」
大幹部は1万円札を小さく折りたたみ口にくわえた。
彼女だったユリアが亡くなってすでに3年が経とうとしていた。
秘密結社へ潜入し二年が過ぎた頃、この子に出逢った。ユリアとそっくりのキャバ嬢、桃野ピーチだ。
まさにふたりは運命の出逢いだったのかもしれない。
「フフゥン」ピーチは微笑みを浮かべた。
ふたりはしっかりと抱き合ってチップを口移しした。
こうしてキャバクラを舞台に正義の味方と悪の秘密結社の大幹部によるラブゲームが展開された。
何しろ今夜はエイプリルフール。
ひとクセもふたクセもある二人だ。
まさにキツネとタヌキの化かし合いだろう。
おしまい
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