ピーチ

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ピーチ

「じゃァダーリン。次にあった時が楽しみね」  またクレアは意味深に微笑み、大幹部へ『チュッ』と投げキッスをした。 「……」ピーチは眉をひそめクレアを睨んだ。 「では姫ェ。あとは宜しくお願いします」  クレアは遠慮するようにピーチと入れ替わって個室を後にした。  ピーチとすれ違いざま軽く頭を下げた。しかし笑顔を浮かべてはいたが、目は笑ってない。  クレアはすでにピーチが正義の味方ジャスティス・ピンクであることを察知していた。 「ンうゥ……」   ピーチは不満げな顔でクレアを見送った。 「……」  大幹部もなんとなく居心地が悪い。  重たい沈黙が個室を支配した。洋楽のバラードのメロディアスな曲だけが耳に届いた。『アンチェインド・メロディ』だろう。 「なんなの。あの子。ヘルプのクセにダーリンと馴れ馴れしくしちゃって。ダーリンもデレデレして。まさか、ああいうクールな子が好みなの?」  ピーチは睨みつけてクレームをつけた。 「いやァ、ちょっとクレアとは共通の趣味があってね」  思わず大幹部も苦笑いを浮かべた。誤魔化すのが大変だ。まさか、同じ秘密結社の同僚とは告白できない。 「え、まさか。趣味ってSMとか?」 「いやァ、まさか。ミステリーだよ。ある事件を考察していたんだ」  大幹部のダークネスはずっと恋人の本城ユリアの死の真相を突き止めようと秘密結社へ潜入していたのだ。未だに真犯人が突き止められないでいた。 「フフゥン、でも今夜はおじいちゃまから思わぬボーナスを頂いたおかげで、ひと息つけそうよ」  だがピーチはコロッと態度を変え、ニコやかに微笑んだ。よほどを頂いたのだろう。 「えェッなんだ。おじいさんって、目白の闇将軍か?」 「そ、さすがおじいちゃま。今晩、遺産相続の手続きをしてくれるんだって」 「え、遺産相続?」 「そう、おじいちゃま、あんまり長くないのよ。余命何ヶ月だからピーチに養女になって、莫大な遺産を分けてくれるって言うの。ラッキーでしょ。棚からブタマンよ」 「いやァ棚からボタモチだろう。だけど遺産を分ける。マジか?」 「だっておじいちゃま。子供が出来なかったらしいの」 「だからピーチ姫に遺産を?」
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