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人気キャバ嬢ピーチ
今夜も赤い月が夜空を照らしていた。
なにか不吉な予感した。
ここは都内某所にあるキャバクラ『シャングリ・ラ』だ。
開店時間はノリのよい洋楽がBGMに使われていた。洋楽を使うのは来客に非日常感を演出するためらしい。
だんだん夜も更けて遅い時間になると客の満足度をアップさせるためムードのあるバラードが多くなるようだ。
店内は淡いピンクの照かりに照らされていた。赤やピンクの照明は本能的に人を興奮させる作用があるらしい。
そこへ颯爽と若手女優のようなキャストがフロアへ現れた。
ピンクのドレスに身をまとった人気ナンバーワン・キャバ嬢の桃野ピーチだ。
「おおォッ!」
彼女が店内を歩いただけで客席からどよめきが起きた。
当店イチの売れっ子で別名、キャバクラに舞い降りたピーチ姫と言われていた。
グラビアアイドルみたいな外見で圧倒的なスタイルだ。見るものの視線を釘づけにしていった。
特に大きなGカップの胸元に男性客の視線が集まった。
童顔だが艶やかで目を見張るほどの巨乳だ。SNSの総フォロワー数も三百万人を越えると言われていた。
よほどの常連客でない限り、予約をしてもなかなか接待を受けられないでいた。3ヶ月先まで予約は埋まっていた。
「フフゥン」
若い男性客は彼女に優しく微笑みかけられただけでデレデレだ。まさに魔性のキャバ嬢と言っても過言ではない。
桃野ピーチがノックをし、個室へ入るとひとりのイケメン男性が待っていた。謎のコワモテの男だ。
「フフゥン、ダーリン。お久しぶりねェ。何やってたのよ。まさか他のお店に鞍替えなんかしてないわよねェ」
だがピーチはソファに腰を下ろすなり、その謎の常連客に抱きついて甘えた。
男性客との距離を詰めるのが異様に上手い。
「ンうゥ……」
さすがに無表情だった謎の常連客も嬉しそうだ。
口角が2ミリほど上がった。彼にしては珍しい事だ。
桃野ピーチは常連客たちのことを『ダーリン』と呼んでいた。
万が一、名前を間違えると大変な事になるからだ。
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