ダークネス・ギルディア

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ダークネス・ギルディア

「フフゥン、済まなかったな」  謎の怖モテ男が笑みを浮かべた。いつもは寡黙だが、ピーチと顔を合わせると少しだけ饒舌(じょうぜつ)になるようだ。  濃厚な香水をつけているのだろうか。本能に訴えかけて来た。甘美で蠱惑(こわく)的な匂いを嗅いでいるうちに目眩がしそうだ。  謎の常連客は表社会では影丸龍という名で大手IT企業の重役をしているらしい。  だが見かけは濃いグラサンをかけ、(コワ)モテなのでヒットマンに間違われた。  ニヒルな影のあるイケメンと言って良いだろう。身体つきもマッチョでゴツい。  無理もないだろう。彼は裏では悪の秘密結社『ギルディア』で大幹部をしていた。  首領のベガを除けば、秘密結社『ギルディア』ではもっとも権力のあり組織ではナンバーツーの強兵者(ツワモノ)だ。  しかも武闘派で腕もたった。敵である正義の味方ジャスティスのメンバーも一目置くような存在だ。組織の誰もが彼を(おそ)(あが)めていた。  しかし売れっ子キャバ嬢ピーチは彼の正体などまったく気づかなかった。 「ねェ、ダーリン。今月もピンチなの。お願い。チップ弾んでェ」  それどころか、馴れ馴れしくチップを奮発するよう強請(ねだ)っていた。八方美人で節操がない。 「お願い。ダーリン!」  桃井ピーチの甘い吐息が彼の頬を優しく撫でていった。 「うッううゥむ、今月もか?」  大幹部もまたかと言うような感じだ。  毎月のように生活費に困っている彼女(ピーチ)を悪の大幹部が援助していた。もちろん秘密結社の接待費から捻出していた。  しかも彼女は他の常連客からも志し(チップ)を貰っていた。  いったい何に散財しているのだろう。  あくどいヒモにでも金を巻き上げれているのだろうか。だったら許せない。 「だって、スマホ代も払えないのよ。信じられないでしょ。いっくらダーリンに奉仕しても治療費で貯金もゼロなの」 「えッ、治療費って?」  謎の大幹部は眉をひそめ聞き返した。 「そうよ。見てェ。ここ大きなアザになってない?」  ドレスをめくって太ももの辺りを見せた。  
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