ジャスティス・ピンク

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ジャスティス・ピンク

「それじゃァ本当にブラック企業じゃないか。()がギルディアだって、ちゃんと労災認定はするのに」  大幹部もしみじみとつぶやいた。 「えェ、()がギルディアって?」  すぐにピーチは不審に思って聞き返した。 「いやァ、だから悪の秘密結社だよ。そこだって労災は降りるんだって聞いたから」  慌てて大幹部は言い直した。まさか、自分が悪の秘密結社『ギルディア』の大幹部だとは告白できない。 「そうなの。正義の味方と違って福利厚生が行き届いているのね。悪の秘密結社は」 「まァ」なにを褒められているのだろうか。 「だから正義の味方は怪人と闘ってケガをするたびに貯金を切り崩さなきゃならないのよ。それに仕事も出来ないから踏んだり蹴ったりなの」 「ううゥン、なるほど…、そりゃァ由々しき問題だなァ」  大幹部も唸って腕を組んだ。本来なら敵である正義の味方の懐事情など気にかけることはない。 「でしょォ。だからいつもお金がないの。いっくら正義の味方としてみんなを助けてもカツカツなの。今夜も非常食のカップラーメンしか食べれないの。私だってたまには、リッチにお寿司か焼き肉食べたァい!」  よほど不満なのか、唇を尖らせて喚きたてた。 「わかったよ。今度、寿司でも焼き肉でも好きなのをごちそうしよう」  そのくらい大幹部にとってはお安い御用だ。 「キャッキャッ、だから好きなの。ダーリン」  ピーチは抱きついて大幹部の頬にキスの嵐を浴びせた。まったく現金なものだ。 「フフゥン、たいした奢りじゃないよ。それよりもさっきのオクトパス・ギルディアとの一戦はどうなったんだ?」 「ああァ、あのタコ怪人ならボコボコにして酢ダコにしちゃったわ」 「酢ダコ?」 「そしたらワンワン泣いちゃったから、秘密結社まで送って行ったのよ。もう二度と悪さをしないようにって(さと)して!」 「ううゥッ、そうか。泣いちゃったのか」  さすがに大幹部もあきれ返った。
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