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ブルーシートに戻ると、友人たちが、ニヤニヤしながら俺の肩を叩いてきた。
「なになに、ナンパでもしてたわけ?」
「はぁ? 違うし」
「でもフラれちゃったんだろう? 俺たちが慰めてやるから安心しろよ」
「だから違うって言ってるだろ」
そんなやりとりをしていると、あの子のところに一人の女性が近付き、話しかける様子が見えた。しかし女の子は首を横に振って立ちあがろうとしなかったため、女性は諦めたようにその場を離れた。
なんの話をしていたんだろう……女性を目で追って行くと、さっき俺が指差した付近のブルーシートに、大人数で集まっているグループへと戻っていく。
その時、やっとあの子の気持ちがわかった気がした。あぁ、そうか。あの子はあそこのグループのメンバーとお花見に来たのに、何か理由があって戻りたくないんだ。
それなら悪いことしちゃったな……謝りに行った方がいいのか迷う。だって俺に来てほしくないって思っているかもしれないから。
「あの子、ずっと下向いてるね。何してるの?」
「四葉のクローバーを探してるらしいよ」
「それはまた気が遠くなるような作業だなぁ」
「でもさ、四葉のクローバーって毎年同じ場所に生えてくるらしいよ。しかも、根っこはみんな繋がってるみたいだし、もしかしたら繋がってるクローバーからは同じように四葉が生まれるのかもね」
「そうなの?」
ということは、一度場所を覚えておけば、翌年から毎年四葉のクローバーにありつけることになる。それってすごいことじゃないか!
俺は思わず立ち上がった。彼女に嫌な思いをさせちゃったお詫びに、俺が四葉のクローバーを見つければいいんだ。
「悪いんだけどさ、ここにいてくんない? 俺、ちょっと用事思い出したから」
二人は顔を見合わせると、にんまりと笑った。
「どうぞどうぞ、ごゆっくり」
なんかちょっと様子が気持ち悪かったけど、とりあえず二人に任せてクローバーを探しに出かけた。
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