幸せクローバー

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 あーあ、こんなにきれいな桜なのに、朝からずっと見続けてきたからか、すでに見飽きてきている自分がいる。  ブルーシートに座り始めてから、もう少しで丸五時間が経とうとしている。尻が痛くならないよう座布団も持参したし、寒くないようブランケットと厚手のジャンパーだって持ってきた。それでも一人で友人達の到着を待つ時間は、心も体も冷えていく。  まぁ元はと言えばじゃんけんで負けた俺が悪いんだけどさ。集合時間まであと一時間。誰か一人くらい、早く到着しようという優しい気持ちの奴はいないのかな。  ため息をつき、とりあえず温かいものでも買いに行こうと立ち上がる。コーヒーだとすぐにトイレに行きたくなるから、お茶あたりがいいかもしれない。  そんなことを考えながら歩いていると、突然少し強めの風が吹き、たくさんの桜の花びらがふわふわと舞い始めた。  思わず目を細めた視線の先に、どこか違和感を感じる女の子の姿を見つける。ベージュのサロペットを着て、髪の毛はまるで風になびく花弁のように柔らかかった。  みんなが桜を見上げているのに、その子は下を向いたまま。敷物に座ったり、歩いて楽しそうに過ごす人々と違って、しゃがみ込んで眉間に皺を寄せている。  あの子、何してるんだろうーー自動販売機でお茶を買っている間も、つい気になってしまう。  同じ大学生くらいかな。それか少し年下。俺は女の子をじっと見ながら、とりあえずお茶をもう一本購入した。  それからゆっくりと彼女のそばに近寄り、一メートルほど離れた場所でしゃがみ込んでみる。いきなり話しかけたら変な奴と思われるかもしれないが、まぁいいか。 「さっきから何してるんですか?」  軽く声をかけてみると、女の子は上目遣いで俺を見ると、眉間に深い皺をよせた。やばい、なんだか思っていたよりも不機嫌そうだ。
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