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さっき見ていたあたりはきっとなさそうだから、少し離れた場所にしよう。
あの子がいる場所から通りを一本挟んだ場所にある、木の根がゴツゴツし、少しジメッとした場所を見つける。
誰もいないしちょうどいい。その地面をじっくりと眺めていた時だった。俺の目に、四葉のクローバーが飛び込んできたのだ。
「えっ、マジで見つけちゃったよ」
ゴクリと唾を飲み込み、取ろうとしたけど一度手を止める。これって俺が取ったら意味ないんじゃないか?
そう思って辺りを見渡し、地面に落ちた桜の花びらを掻き集めると、四葉のクローバーを隠すように上から散らした。
そして慌てて彼女の元へと走っていく。早く見せてあげたいーーそうしたら笑顔を見せてくれるかな?
俺は通りを越え、彼女の前に勢いよくしゃがみ込んだ。すると女の子はびっくりしたように、一瞬飛び上がったのがわかった。
「な、何ですか?」
俺は彼女の手を取り、
「ついてきて!」
と走り出す。
「えっ、な、何ーー」
彼女の返事を待たずに、とにかくさっきの場所に戻った。それから目印の山盛りになった桜の花びらを確認して、鼻息を荒くした。
「この辺ならありそうじゃない⁈」
女の子はまた眉間に皺を寄せて俺を見たから、ばれたんじゃないかと一瞬ドキッとした。しかしそのまましゃがみ込んで下を向いたため、ホッと胸を撫で下ろす。
女の子は桜の花びらの山に気付き、それをそっとどかし始めた。
「あっ……あった……」
「おぉっ! 見つかった! 良かった良かった!」
しかし女の子は未だに目を細めて俺を凝視していた。あぁ、これは完全にバレてるやつだ。素直に認めた方がいいのだろうか。
「……まるで小さな桜の木ね」
女の子がポツリと呟いた。
なんのことかわからなかった俺は、足元をよく見てみる。ゴツゴツした木の根がまるで桜の幹で、山盛りになった花びらは、桜の花を咲かせているように見えた。
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