「ランチはいかが?」

1/1
前へ
/1ページ
次へ

「ランチはいかが?」

絵梨奈は街を歩いていた。 「絵梨奈さん、こんにちは」と誰かに声をかけられた。見てみると この世のものとは思えないほど丹精で美しい顔と187cmでスタイルの良い清潔感溢れる男性が立っていた。西園寺正隆であった。この国で三本の指に入る財閥の御曹司 である。名門大学に通う20歳の大学二年生だ。 絵梨奈もまた非常に美しい、スタイルの良いお嬢さんだった。 絵梨奈「西園寺さん、こんにちは!お元気ですか?」 西園寺「はい、元気です。絵梨奈さん、今お時間ありますか?もし良かったら     ランチでもいかがですか?なんでも食べたいものおっしゃっていただければ」 絵梨奈「ありがとうございます。でもまだそんなにお腹空いてないかなぁ」 西園寺「でしたら表参道あたりのカフェでお茶でもいかがですか?車ですので」 絵梨奈「うーん、すみません。何となくひとりでプラプラ歩きたいんです」 西園寺「そうですか。わかりました。また今度是非!」と眩しいくらい爽やかな笑顔を     見せた。 絵梨奈はふたたび街を歩いた。 すると「よう!」と男性にまた声をかけられた。 沈丁花禄郎だった。 「何してるんですか?こんなところで」と絵梨奈は問いかけた。 沈丁花「今からココイチ行くからよ。奢ってやっから行こう」 絵梨奈「それがレディを誘う態度?」 「ゴチャゴチャ言わんと来ればええんや!」と沈丁花は返した。 沈丁花の圧に負けて絵梨奈はココイチに向かって歩き出していた。 ふたりはココイチのある反対側の通りに到着した。 絵梨奈「ココイチ、あそこだけど、なんで此処?」 沈丁花はおもむろに双眼鏡を取り出した。  絵梨奈「は?」 「いつも店長が来てるとルーが少ないんだ。店長がそろそろ帰る時間だからよ」と双眼鏡を覗きながら沈丁花はそう語った。 絵梨奈「……」 時間だけが過ぎて行った。 「店長帰っから行くぞ」 ふたりはココイチに入店した。 「なんでも頼めよ」 「何がおすすめなんですか?」 「野菜カレー、辛さ普通、ライス少なめにしとけ」 ふたりのテーブルにカレーが運ばれて来た。 沈丁花はカレーをむさぼり食いながら、小声で「な?ルー多いだろ?」と自慢気に語った。 絵梨奈は「セコいなぁー。こんな時間にカレー食べてるのウチらだけですよ」と呆れていた。 「よく店内を見てみろ」と沈丁花はカレーに夢中になりながら、目を会わさず呟いた。 絵梨奈は店内を見渡した。 すると、奥の方のテーブルにバラバラで、掟さん、坂本ちゃん、竜次さん、ライママが 別々の席でカレーを夢中で黙ってむさぼり食っていた。 「……」 絵梨奈は言葉を失っていた。 絵梨奈の頭の中に店内のセピア色の映像と哀しい音楽が流れた。 そして店の外から一部始終を小学生が見ていた。 小学生の心の中にも店内のセピア色の映像と哀しい音楽が流れた。 つづく
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加