ママと反抗期

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「ママは今日からママを辞めるわ!」  四月一日の朝一番にされたママのその宣言は、てっきりエイプリルフールの嘘だと思った。  でも、ママは完璧に本気だった。  その日から家の中の家事は担当制になり、どんなに反抗してもその仕事は自分でやるしかなかった。  どうせ私がやらなくても、ほっとけばママが片付けるでしょ? 家のことはママの役目なんだし! そんな甘い見通しは四月最初の一週間で崩壊した。  ママは全く手伝ってはくれず、ただ教えてくれと頼めばきっちりと家事のやり方を伝授してくれた。  ……そして苛立ちと混乱と納得と和解の一年が過ぎた。  私は自分の身の回りのことを自分でこなす事を覚え、そして……長い反抗期を卒業した。 「ママ、今日から本当にママを辞めていいから。私もうママの手助けがなくても大丈夫」  でも私のその言葉が、本当は一番のエイプリルフールの嘘だったのかもしれない。
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