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〜数年後のおはなし〜
今夜は桜が満開の月夜。
毎年飽きもせず明美のやつは、
「私の願いはただひとつ!
また来年もサクラに会う!」
しか言わない。
相変わらずぼっちか!とツッコミたくなる。とんだコミュ症オタクぼっちに懐かれてしまったな。だがまぁかわいいやつだ。
ところで今年は明美の様子がいつもと違うような…。
◇
「ねーサクラってさ、ずっーと桜だったの?」
「ちょっと何言ってるかわからん」
「だからー、転生して桜になったとかないのー?」
「いい歳して語尾をあげるんじゃないよ」
「いいじゃん教えてよー
だってうちらズッ友でしょ?」
「おいばばぁ!そろそろ聞いてられんぞ」
「はいはいやめます。てか、いま流行ってるじゃん転生したら◯◯だった的なの。
前世は人間だったりしないの?◯◯王国の王女だったとか」
「あー確かにね。流行ってるよね」
「…ふっといてなんだけどー、なんでサクラが知ってんのよ。どこから情報仕入れるの?ほんとサクラって変わってる」
「…絶対言わない」
「けちぃ!」
確かになんで現世のことがわかるかと聞かれても自分でもわからない。おそらくそういう設定なのだろう。
これもまた誰かの夢の中であり空想の中であって…
「ちょっと!サクラ聞いてる?ぼっーとしてたでしょいま」
「うん?あ、まったく聞いてなかった」
「もう!だから、そのさ…友達のよしみで今回だけおまけで2個願い叶えてくれたらなぁって…だめぇ?」
「はぁ?ダメに決まってるだろ!」
「そ、そこをなんとか神様仏様サクラ様!」
そう言って明美は駐車場のコンクリートに頭をつけた。
「土下座ってお前…ひくわ!やめいやめい!
まず理由を話さんかい!」
サクラが言うが早いか明美はすぐ頭を上げた。
「実はその…最近ないの。旦那と…その…セッ…セッ…ってみなまでいわせんなって!」
「お前達セックスレスなのか?」
「いやだから、なんでそんな言葉知ってんのよ…」
「じゃあお前の2個目の願いは旦那とセックスがしたいですってか?
おまえはやっぱりバ◯か?」
「◯って?」
「カ!」
「なんで一気に言わないの?」
「ご時世的にコンプラ違反だからな」
「たしかに!じゃないよ。ったく。わけても違反でしょうよ。だからー、
その…結婚して三年も経つとさマンネリがきてるし男女というかもう家族なわけよ。ときめきも減ってるし。そもそもイビキも寝っぺもうるさいから部屋も別だしもうどん詰まりってことよ。」
「なるほどね。大変だな人間も」
「そこで、サクラちゃん!わたしの為に人肌抜いて、もとい人肌脱いでくれませんか?!お願い!体貸して!!」
「はーん??それはどういう意味だ?」
「だからー、若くてぴちぴちのあたしが前に現れたら旦那もその気になるかもしれないじゃん?てはなし。
サクラちゃん、一生のお願い!」
また明美は地面に頭をつけて言った。
「…今回だけね」
「えっ?なんて?」
「いっとくけど二度目はないからね。」
「えっ?マジで言ってるの?
サクラ愛してるー!」
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