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 そこにはラナスさんといい勝負をしそうな筋骨隆々の男性が巻き割をしていた。一瞬、誰かと思ったがその人は私も知っている人だった。 「ウェルス」  レナさんの呼ぶ声に手を止めたウェルスさんは斧を置き汗をひと拭き。 「おぉー。レナ。どうしたんだこんな時間に?」 「いやぁ実はさ……」  ウェルスさんにこれまでの説明をするレナさん。 「――そうかぁ」  そう言ってウェルスさんは腕を組んだ。 「――お前の頼みだし、聞いてやりたいけどなぁ」  小首を傾げどうやら無理な理由があるようだ。  そんな彼を見ながらもう一人とはウェルスさんの事だったんだと私は一人そう納得していた。(ウェルスさんの事はそこまで知らないけど)確かに心強い。 「なんだよ? ダメなのか?」 「まぁな」 「ウェルスさんが一緒だと心強かったんですけど残念ですねぇ。もしかしてウェルスさんもレナさんと一緒に衛兵をしてたんですか?」 「いや。俺はそういうのは性に合わないからな」 「でもウェルスさんが守ってくれたら町のみんなも頼もしいと思いますよ」  私はそう言って格闘家に怒られそうなへっぽこなパンチをして見せた。 「いやルルちゃん。違うって。こいつは――」 「お兄ちゃーん!」  するとレナさんの声を遮り幼い女の子の可愛らしい声が聞こえ、私達の視線は同時にその方へ。駆けてきたその子は真っすぐウェルスさんの元へ近づいた。歳は二歳から四歳といったろころ。
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