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 そして私とレナさんはメモを頼りに狩猟なども行われている近くの森へ。  と思ったが、その前に一度家へと戻ったレナさんは腰に剣を差した。 「ここら辺じゃ魔物の目撃情報はほとんどないけど、念の為にね」  足を踏み入れた森は普段行くことが無いからか、私にとっては別世界のような感覚だった。どこを見回しても木々が囲っている。一応、道と呼べるものは伸びていたけど少しの歩きずらさも、静けさの中へ時折響く鳥の囀りや木々のざわめき。空気同様に全てが澄み渡っていた。  胸の高鳴りと歩きずらさに運動不足が重なり、気が付けば口でする程には私の息は乱れていた。  でも一方で隣を同じ速度で歩くレナさんは町を歩くように平然としている。 「レナさん全然疲れてないんですね。凄いです」 「まぁ体力には自信あるし、昔はよく森に来てたからね。あっ、休憩したかったら無理せず言うんだよ?」 「はい。でもまだ大丈夫です」  それからも立ち止まる事なく私達は森を進んだ。  どれくらい進んだんだろう。それは分からないけど確かなことは一つ。 「これっぽいね」 「そうですね」  森の中にポツリと建つ家が一軒、私達の目の前にあるという事だ。まるで森と同化するようにもしくは迷彩のように、その家の外壁には蔦が這っていた。 「あんまり人が住んでるようには見えないけど、とりあえず行こうか」 「はい」  そしてドアまで近づくと一歩前のレナさんがノックした。  だが消えたノック音を乱す応答は無く、沈黙が私達の間を通り過ぎてゆく。 「すみませーん」  レナさんは声と共にもう一度、ノックをした。  一秒、二秒……。続く沈黙。  もしかしたら場所を間違っているのかもしれない。私がそう言おうとして、レナさんが振り返ろうとしたその時。  緩慢と開き始めるドア。 「ゴホッ! ゴホッ!」  第一声は激しい咳。  開いたドアから姿を現したのは、点滴スタンドを握った今にも倒れそうな顔色の悪い白髪の男性。  その思わず心配してしまう男性の姿に私は言葉を口にするのを忘れてしまっていた。それはレナさんも同じなんだろう咳の後、沈黙がこの場を包み込んだ。
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