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「――あっ。えーっと、コルディア・タースさんに会いに来たんですけど」  男性が小首を傾げると我に返ったレナさんがその名前を口にした。 「コルディアは僕だけど?」  意外な言葉に再び辺りへ流れる沈黙。だが今度は鳥の鳴き声が途中で割り込んだ。 「あー。えーっと……実は頼みたい事がありまして」  どうすればいいか分からないままといった口調でとりあえず用意していた言葉を吐き出すレナさん。 「頼みたい事?」 「ここの事はウェルスから聞きました」 「ウェルス」  その名前に微かに頷くコルディアさん。途中で軽い咳を二度挟んだ。 「とりあえずどうぞ」  そう言って彼は家の中へ招き入れてくれた。会釈と一言、私達は中へ。  家の中は、入ってすぐにリビングダイニングがありそこまで広いという感じではない(奥にあと一部屋か二部屋ありそうなぐらい)。全体的に白を基調としたシンプルな感じで、でも町のどの家とも違った雰囲気は一瞬にして私を不思議な感覚へと導いた。そしてその色合いがそうさせているのか、それとも森の中だからか――心做しか少し涼しい。  テーブルを挟み並んだソファへ並んで腰を下ろした私達。少し遅れて私達の前へ飲み物を置いてから反対側へ座るコルディアさん。別に危なっかしいという訳じゃないけど、どこか倒れてしまいそうで手を貸してあげたくなる。少しウズウズとしながらも私はじっとその姿を見つめていた。  ふぅー、座ると一度大きく息を吐くコルディアさん。
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