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それから少し時間が過ぎ、王の間でパエルナ・メールッキは視たモノを話した。
「そう遠くない未来。世界を光すら通さない深い闇が覆いつくすでしょう。光より生まれし悪しき者が、世界へ鳥も鳴かぬ平穏で塗り潰してしまう。ラグナロクを境に世界は静まり返るでしょう」
「なんと! 悪しき者……魔王か。手立てはないのか?」
「悪しき者と対峙する若者が一人」
「その勇者の名は?」
「――ウェールッドのアンセル・タイム」
その日の内に国王はその者を王城へと招くよう指示を出した。
「え? 俺っすか?」
突然の事にポカンと小首を傾げるアンセル。
だがどんな理由があろうとも一国の王から招待を断る事は出来ない。王国から離れぽつり静かに日常を送る町の単なる青年ともなれば猶更だ。
そして王城へと足を踏み入れたアンセルは事の説明を受けるが、それは素直に受け入れる事は出来ないような内容。とは言えアンセルの性格と状況を合わせれば、彼がそのまま聞かなかった事にするという選択肢はなかった。
それからアンセルは王国随一の騎士であるグラムス・シグドの元、握ったことすらない剣の訓練を開始。来るべきその日の為に。
―――そして予言通り、その時は訪れた。世界を闇が包み込み、異形の魔物が辺りを徘徊し始め、世界を見渡せると言われる世界最高峰の山、ザべランタの頂上へ禍々しい城が一夜にして姿を現した。
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