忘れた代わりに違うものがまたひとつ──またひとつ──募っていく

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 積み重なった本がある。 「この小説の続きが気になる。でもあなたと一緒に読みたいから我慢するわ」  この人の前では強がった。 「この漫画。新刊もうすぐね。この人も楽しみにしてる。私もよ……」  この人を見ればワクワクしているのが見れば分かる。 「今日のドラマの続きは来週。どうなるのかしら」  恋愛ものは興味がない振りをして過ごしているけれど、この人は涙を流しながら見てる。 「今日も勝てたわね。この分なら優勝?」  あなたの応援してる地元の野球チーム。この人は地元を遠く離れても熱心に応援している。 「このゲーム、そろそろラスボス登場じゃない? やっぱり強いの?」  この人はもうちょっとキャラを育てないとなっ……て呟く。 「また、長電話? たまには私の相手もしてよ」  この人はよく地元の母親に電話する。もう、マザコンかしら。 「綺麗に部屋を片付けるのね。珍しい……忙し過ぎてする暇なかったものね。いつも帰りが遅いから」  この人は私には手伝わせない。 「いろいろ知らないことが多いわ。明日になったらまたいろいろ教えてくれるのかしら」  この人は私にいろいろ興味があるものを教えてくれる。 「もう、寝るのね。明日もいろいろ教えてね。おやすみなさい」   この人は片付いた部屋で眠った。今日はそのまま眠りについている。 「明日になれば……いろいろ教えてね」 
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