第3話 勇者ブレイド到着

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第3話 勇者ブレイド到着

 朝日が三人の影を形作る。ブレイド率いる勇者パーティーの三人だ。  ブレイドは剣を携えており、影にすらオーラがある。  ロクサーヌ・スプラッシュウェーブは、長髪の髪が左右に動いている美女だ。  ドミンク・バブルブラストは小がらで、二人の半分ほどの身長しかないが、ガタイは良かった。  三人ははゆっくりと近所を散歩するような足取りで歩いている。目的はスミレ町。四人目の仲間、ライダーからの情報はすでに共有されていた。 「ふわぁー、いい天気だねブレイド」  ロクサーヌが歩きながら大きくあくびをした。 「昨晩はよく眠れたか?」 「まずますだね。ブレイドは?」 「いつも通り、ぐっすり眠れたよ」  確かにブレイドは毎朝シャキッとしている。 「ふむ、スミレ町か。ヨザクラ王国のふもとの小さな町だな」  ドミンクが地図を広げて言った。 「小さな町にまで魔族が根を張って来ていると言うことだ。魔王軍の活動が活発化してしまった影響だろう。随分と侵食を許してしまった」  ブレイドが険しい顔つきで答えた。  世界の支配を企む魔王の戦闘部隊:魔王軍は職業:勇者の最終目的でもあった。  丘上に差し掛かった。  「そろそろスミレ町が見えてくるぞ」  ドミンクが指差した一本道を目で追っていった先に、町と言うより集落に近いものがみてとれた。周りを木の柵で囲まれた畑と、まばらに建っている2階建ての家が、こちらの様子伺っているようにも見える。2階に取り付けられた二つの丸い窓が遠くから見ると目のように錯覚してしまう。 「おや?」  ブレイドは目をこすった。ある意味錯覚ではなかった。一歩道の最終到達地点。つまり、スミレ町の入り口に誰がいる。 「少女か。誰かを待っているようにも見えるな」  ドミンクが道のりの先を見つめながら言った。  あれが今回の依頼者か。  ブレイドはライダーから、この町に着いた時に声をかけてくる少女がいるはずだと聞かされていた。 「私たちのこと待ってるんじゃない?」  ロクサーヌが期待を込めて言った。 「いくら勇者パーティーとはいえ、報酬がなければ生活できないからな。あれが正当な依頼人ならライダーが仕事をしたということか」  ドミンクがチラリとブレイドを見た。 「正解。進もう」  ブレイドがニヤリと笑みを浮かべた。 「あのー、すみません」  ブレイドたちがスミレ町に近づくと、少女が声をかけて来た。 「あなたたち勇者なんでしょ」 「そうだが、君は?」 「助けて欲しくてここで待ってたの」 「よし、条件を聞こう」 「ここじゃ危ないから、わたしの家に来て」  少女は向こう側に見える家を指差した。 「うん。分かった。ロクサーヌ、ドミンク別に構わないよな」 「もちろん」 「ああ」  二人は即答した。    少女に連れてこられた家は、スミレ町の入り口の割と近くにあった。周囲は枯れた草と干からびた井戸がある。  家の中はボロボロで、父親と母親は痩せ細っており、家の中で寝ていた。 「ひどい…!」  ロクサーヌが口に手を当てて言った。   「私の名前はポニー」  少女は名乗った。 「ポニーなにが起こったんだ?」  ブレイドが言った。 「……なにも知らない。生まれた時からこうだったから」 「生まれた時から…!? 随分と長く放置されているのだな」 「うん。チチとハハが言うには、スミレ町はヨザクラ王国の支配地なんだけど、一度も様子を見に来たことはないって言ってた」 「ふむふむ。それは災難だったな。それでやったのは魔族だな?」 「そうだよ。半年に一回、領主さまと魔族のリーダーが話し合って取り分を決めてるの」 「なるほど、そのせいだな。ポニーお腹空いてないか?」 「いつもぺこぺこだよー。と言うか私は生まれてから満腹というのを味わったことがない。チチとハハは、満腹って苦しいけど幸せなんだって言ってた」 「うん。間違ってないな」 「父と母はわたしに、なけなしの食べ物を優先的に渡してくれたの。でも、わたしは悲しい」  ブレイドはポニーの頭をよしよしと撫でる。 「この勇者ブレイドが全て解決してやる。悪い魔族の支配から解放された世界は最高に良くなるぞ。それまで大人しく待っていてくれ」  それを聞いてポニーはニコリと笑って頷いた。    領主の家は、スミレ町の中で一際大きく目立っていたため、すぐに分かった。ブレイドたち勇者パーティーはドアをノックする。  ガチャリと半分開いて、使用人が顔を出した。 「どなたですか?」  元気のない声だ。使用人は痩せていて、あまりご飯を食べれていない様子が伺えた。 「職業:勇者のブレイド率いる勇者パーティーです。ここがスミレ町の領主の家と睨んで面会を求めてきました。領主と会いたいのですがよろしいですかな?」 「なんと勇者さまがお越しで! 領主さまは奥の部屋です。ご案内します。どうぞ」 「お邪魔します」  ブレイドたちは中に入った。あちらこちらに蜘蛛の巣が張っていた。外から見ると立派な建物だったが、中身の清掃は行き届いてないようだ。  こりゃ、色々と問題ありだな。  ブレイドはそう思った。
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