16人が本棚に入れています
本棚に追加
メッセージはともかく、明から電話することはないし、晶貴からもいきなりかかってくることはない。ごくたまに、電話していい状況か確認のメッセージが届いた後に着信した。明が部屋にいるときが一番話しやすい。周囲に人がいなくても、ビデオ通話はしなかった。
「昨日香奈ちゃんと電話で話せた。三年ぶり」
開口一番、喜びが伝わって明も嬉しくなる。
「彼氏さんと入籍して一緒に暮らし始めたんだって。少しずつだけど、落ち着いてるみたい」
「よかった」
「一緒にはとれなかったけど、応援してるからてっぺんとってね、だって。最後はこっちが尻叩かれちゃった。頑張らないとなー」
と一つ息をつく。明は素直に口にした。
「晶貴は最初に聴いたときから私のてっぺんに君臨してます。一番高いところを独走中です」
他にもいい音楽はあるけれど、明の最高位は揺るがない。何人たりとも追いつけない。晶貴に、今度は大きく溜息を吐かれた。
「今目の前に明がいたらなぁ」
「いますよ。電話越しですけど」
「今度会えたら、さっきのオレの顔見て言ってくれる?」
「ムリです」
「そんなきっぱりイヤがるかな」
「イヤなんじゃなくて。ムリなんです」
神の顔まともに見たら、私溶けるじゃないですか。
三年生に進級して、明はやっと小田くんと同じクラスになった。中学の頃とはもう違う。地道に、自分から声をかける修行を重ねて数人の女友達もできたのだから、と、四月の半ば、小田くんへの挨拶に挑んだ。初回で成功し、内心でガッツポーズ。しかも小田くんは、高校で同じクラスになったの初めてだね、と付け加えてくれた。明の存在を認識していてくれたらしい。
それからも何度か挨拶と短い会話を交わした。よし、と明は決心した。
最初のコメントを投稿しよう!