両手いっぱいにありがとうの花束を

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 メッセージはともかく、明から電話することはないし、晶貴からもいきなりかかってくることはない。ごくたまに、電話していい状況か確認のメッセージが届いた後に着信した。明が部屋にいるときが一番話しやすい。周囲に人がいなくても、ビデオ通話はしなかった。 「昨日香奈ちゃんと電話で話せた。三年ぶり」  開口一番、喜びが伝わって明も嬉しくなる。 「彼氏さんと入籍して一緒に暮らし始めたんだって。少しずつだけど、落ち着いてるみたい」 「よかった」 「一緒にはとれなかったけど、応援してるからてっぺんとってね、だって。最後はこっちが尻叩かれちゃった。頑張らないとなー」  と一つ息をつく。明は素直に口にした。 「晶貴は最初に聴いたときから私のてっぺんに君臨してます。一番高いところを独走中です」  他にもいい音楽はあるけれど、明の最高位は揺るがない。何人たりとも追いつけない。晶貴に、今度は大きく溜息を吐かれた。 「今目の前に明がいたらなぁ」 「いますよ。電話越しですけど」 「今度会えたら、さっきのオレの顔見て言ってくれる?」 「ムリです」 「そんなきっぱりイヤがるかな」 「イヤなんじゃなくて。ムリなんです」  神の顔まともに見たら、私溶けるじゃないですか。  三年生に進級して、明はやっと小田くんと同じクラスになった。中学の頃とはもう違う。地道に、自分から声をかける修行を重ねて数人の女友達もできたのだから、と、四月の半ば、小田くんへの挨拶に挑んだ。初回で成功し、内心でガッツポーズ。しかも小田くんは、高校で同じクラスになったの初めてだね、と付け加えてくれた。明の存在を認識していてくれたらしい。  それからも何度か挨拶と短い会話を交わした。よし、と明は決心した。
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