両手いっぱいにありがとうの花束を

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 一学期の終業式の前日夜、晶貴に報告を送信する。 『明日、告白しようと思います』  決行当日。明は小田くんの連絡先は知らないので、朝早く登校することにした。小田くんの机の中に、放課後時間をくださいと書いた手紙を忍ばせるために。  誰もいない教室に足を踏み入れ、手紙を握りしめて小田くんの机を目指す明の顔は、どこか果たし状を相手に突き付けにいくかの真剣さを帯びていた。そんな時に制服のポケットでスマホが震えたから驚いた。着信の相手にさらに目が丸くなる。 「どうしたんですか」  応答する前に、急いで廊下にも人影がないのは確認したが、晶貴からだから机の陰に身を潜め、声も潜める。 「今話せる? まだ告白してないよね」 「はい、まだ。決行予定は放課後です。今、机にお手紙入れようとしてました」 「手紙撤収。入れちゃだめ。ねえ聞くけど、明、小田くんが告白OKしてくれたら付き合うの」  意外な質問に笑ってしまった。 「OKされるわけないじゃないですか。太陽は必ず東から上って西から上ることはないのと同じで、絶対ありえないです」 「じゃ、なんで告白するの」 「晶貴が言ってくれたからです。フラれてもいい女になるだけ、って。私、ちゃんと告白してフラれていい女になります。少しずつ人と話せるようになった自分に成長を感じているので、中学生の時に抱いた恋心に決着つけて、さらに成長するなら今だって思ったんです」 「いい心がけだけどね、できれば応援したいとこなんだけど。ちゃんと考えた? 万が一でも億万分の一でも、OKだったらどうするの」 「いやいやいや、ないんで」 「いやいやいや、告白しました、相手もOKしました、でその後、いい女になろうと思って告白しただけですサヨウナラ、こそありえないでしょ?」  なるほど。 「もしも仰るとおりになればそうですね。でもいくら考えても、相手もOKっていうのがどうしてもありえないです」  明には、確率億万分の一どころかゼロとしか思えない。しかし、普段口調の柔らかい晶貴から珍しく断言された。 「小田くんの気持ちは小田くんに聞いてみなきゃわからないじゃん。明が決めるものじゃないよ」  そうか。それこそ晶貴の言うとおりだ。依然コミュ障の自分が他人の気持ちが分かった気になるなどおこがましい。 「わかりました。告白は、フラれるのが目的でするべきものじゃないですね」  長々と、深い溜息が電話の向こうから漏れる。 「てかね。明の一番って、オレじゃないの」 「もちろん晶貴です。殿堂入りの最高位です。すなわち神、他の存在と比較対象するレベルではありません」 「ありがたいのはありがたいんだけど、そこまで特別扱いしてもらわなくてもいいんだよね。神じゃなくていいから、人間の最高位にして」 「と、言いますと」 「この流れで、唯一無二の最高ポジションって言ったら彼氏でしょ」  明は、腰が抜けてへたりこんでしまった。
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