両手いっぱいにありがとうの花束を

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 晶貴が歩み寄って、真っ直ぐに差し出された花束を受け取ってくれた。 「うん。伝わった」  明の瞳と言葉をアンバランスに感じていたが、いざ真正面から、目を合わせ揃って言葉を浴びるとどうだろう。かなりのインパクトに貫かれた。一生、忘れられない気がする。 「ねえ明。連絡先教えて」  大きな目が瞬く。 「オレが友達第一号になる」 「いいんですか、そんな」 「秘密、増えるけどね」  晶貴が唇に人差し指を当てた。見惚れながら、意を決して明は肯く。 「必ず守ります」  目の前の神に誓って。  早速その夜、明のスマートフォンにおやすみのスタンプが届いた。  ベッドの上に正座してうっとり眺める。早く返さないと失礼か、と気が付いて、少し震える指で同じくスタンプを返した。  たまに送られるスタンプにスタンプを返すことに慣れてきた頃、明はその日の報告を送信してみた。 『二学期になって隣の席になった女子と、一週間目にしてようやく挨拶ができました』 『やったじゃん』  と、同じ意味のスタンプも返ってくる。クラスにも友達ができそうな予感と相まって、想像以上の嬉しさにベッドの上を転げまわった。  朝と帰りの挨拶から始めて、挨拶のあとの会話に進めても進めなくても、落ち込みすぎないようにする。亀の歩みの一進一退を、週に一度報告した。  明から送ると、すぐ返ることの方が少ないが、翌日でも翌々日になっても、必ずいつも言葉とスタンプでほめてくれた。
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