01.返事はいつも同じ

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01.返事はいつも同じ

「今年の桜の開花と満開の日時が決まりました」  テレビのディスプレイに映るアナウンサーがニュースを告げた。夕食を口に運びながら、そのニュースを眺める翔太の家族。 「気象庁は今日、各地の桜の開花と満開の日時を発表しました。それによりますと、A地方では開花がいちばん早く3月27日午前10時、BからD地方では3月28日の同じく午前10時……」 「このあたりは3月30日に桜が咲いて、満開になるのは4月5日のお昼って言ったよ。ねえ、みんなでお花見しようよ」  テレビを見ていた翔太は父親にねだる。 「なら、おじいちゃんとおばあちゃんにも声をかけてみよう。一緒にお花見に行こうって」  父親の言葉に翔太は顔をくもらせる。 「おじいちゃん、今まで一度も一緒に花見に行ったことないじゃん。今年もきっと行かないって言われるに決まってるよ」  翔太の言葉に父親は黙り込んで困惑の顔を浮かべる。そんな父親に翔太はさらに告げる。 「毎年お花見に誘っても、あんなものは本物の桜じゃないっていつも言われて終わりなんだ。今年もそう言われるんだよ。せっかくおじいちゃんと一緒に行きたいのに」  この時期の家族の楽しみはお花見。この時期に家族で楽しめる数少ない娯楽。だから、翔太の一家はいつも近所に住む翔太の祖父母にも声をかける。一緒に行きませんかと。  けれど、翔太の言ったとおり、祖父の返事はいつも同じ。だから、翔太一家のお花見には、いつも祖母だけがやってくる。  顔がくもったままの翔太に父親はやさしく告げる。 「とりあえず、声をかけてみなよ、第36区公園なら近いし、みんなでお花見しようって。お花見のチケットだって予約しなきゃいけないから、早く返事してって」
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