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プロローグ
一目惚れの瞬間というものを初めてこの目で見た。
三柴拓人は、隣に立つ清宮将司をまじまじと見つめる。
清宮はそんな三柴の視線など気付く気配もない。
ただ、ただ、ひたすらに目の前に立つ高梨美紅を見つめ続ける。
あ〜、こりゃ、完全に落ちたな。
三柴は絶望的な気持ちに支配された。
春の風が駅のホームに立つ三人を包むように、ふわりと優しく吹いた。
どこからやってきたのか、桜の花びらが一枚ひらひらと舞い、美紅の長い髪に触れる。
淡いピンクの花びらを髪につけたまま微笑む美紅には、目の前に立つ男二人の心の中などわかるはずもなかった。
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