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三柴の目に、美紅は大学生活を満喫する気楽で別世界の人に映るのではないか。
そんな美紅からの連絡など、三柴を不快な気持ちにさせてしまうかもしれない。
そう思ったら、自分から気軽に連絡などできなかった。
三柴からも連絡は途絶え、気付けばお互いの近況などわからないのが当たり前の事になっていた。
ただ、三柴が二年に渡る浪人生活に何とか終止符を打ち、都内の大学に入学したという噂だけは美紅の耳にも入り、そっと胸を撫で下ろした。
無事に大学を卒業し、かねてから目指していた図書館司書の職に就き、都内の図書館に勤務するようになって二年が経つ頃、美紅の元に同窓会の案内が届いた。
高校三年生のクラスで集まる同窓会は、卒業以来、初めてのことだ。
手にした案内状を見つめる美紅の頭に一番最初に浮かんだのは、三柴の顔だった。
「三柴くん…来るかな…」
思わずもらした小さなつぶやき。
ニ年間の浪人生活を経て大学生になった三柴は、今、大学四年生のはず。
会いたい。シンプルにそう思った。
その時、美紅の携帯電話がピコンと鳴り、ラインの受信を主張する。見れば高校時代の友人六人で構成されたグループラインの一員からだった。
【同窓会の案内、きた〜?】
パンダがスキップしてるスタンプつきのメッセージを皮切りに、次々と携帯電話の画面が賑やかになっていく。
【きた、きた〜!みんな、行く?】
【行く予定♪】
【卒業してから、初めての同窓会だよねー】
【行きたい!けど、私はちょっと難しいかも…】
皆、同窓会の案内にテンションが上がっているらしい。反応が早すぎて、小さな笑いが漏れた。
美紅も指を動かし、メッセージを打ち込む。
【私も今、ちょうど案内を見てたところ!行きたいな〜って思ってる。】
美紅のメッセージに柴犬が尻尾を振ってはしゃいでいるスタンプが賛同を示してくれた。
続いて【私も、出席〜】とメッセージが続く。
この六人は卒業してからも定期的に集まる仲で、二ヶ月前にも皆で豆乳鍋を囲んだ。
社会人となった今は、六人全員が集合できないこともあるが、それでも年に三、四回は顔を合わせている。
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