第二章 

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美紅は彼らの向かいに腰を下ろしながら、清宮に事情を説明すべく口を開いた。 「ごめんなさい、いきなりこんな格好で現れて。着ていくはずだった花火大会が雨で中止になっちゃって。せっかく新しく買った浴衣を着そびれたって愚痴ったら、三柴くんが着て来いって言うから…」 「いや、知ってました…浴衣、着てきてくれるって。」 「そうなんだ!」 どうやら、清宮は事前に三柴から聞いていたらしい。 「それを聞いて、今日は何が何でも、ここに来てみせるって誓ったから。」 「…?」 何が何でも? 来てみせる? 誓った? まるで何かの決意表明を聞かされたような気がして美紅が首をかしげていると、三柴が割って入る。 「とりあえず、注文しようって。」 お決まりのように「まずはビール」と口をそろえる。 その後は三人でメニューを覗き込んで、目に付く魅力的な海鮮を次々と列挙した。 「はまぐり、ほたて…」 「海老!」 「かに味噌、イカ…」 「えっ!かに味噌なんてあるの?」 美紅が頬を上気させて食い付くと、清宮が「ある!ほら!」と、メニューを指し示した。 「ほんとだ!嬉しい!」 無邪気にはしゃいで顔を上げると優しい瞳で見つめられ、美紅は恥ずかしさに襲われる。 浴衣着て、かに味噌に大喜びする女って、どうよ? 「高梨はさぁ、海老、好きだったよな?」 羞恥で顔が赤くなりかけていたところを突然、三柴に好物を言い当てられて、美紅は驚く。 「え!何で、そんなこと三柴くんが知ってるの?」 「だって、弁当に入ってた海老フライ、俺がちょうだいって言ったら、海老だけはダメ!ってくれなかったじゃん。」 「…そうだっけ?」 そんなこと、あっただろうか。 美紅が記憶の糸を手繰り寄せようとしている目の前で、三柴は「そうだよ。ケチ。」と美紅を責める。 「いや、人のお弁当にたかってる人に言われたくないって。」 負けじと美紅も言い返すと、三柴が声を上げて笑った。
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