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「…本当に、仲がいいんだな…」
二人のやり取りをおとなしく見守っていた清宮がぽそりとつぶやく。
その声に美紅は、再び羞恥の心が呼び戻されるのを感じた。こんな頭の悪そうな掛け合いを初対面も等しい人の目の前で披露してしまうなんて。
そんな美紅とは反対に、三柴は「まあな~。」などと、何故か自慢げだ。だから、ついついまた突っ込んでしまう。
「その誇らしげな顔は、何?」
「三柴はこうやっていつも自慢するんだよ。高梨さんのこと。」
「え?なんで?」
清宮が面白くなさそうな目を三柴に向けている。
「あの研修帰りの日。駅のホームにいた奴らが結構、高梨さんのこと見てて。次の日、三柴がみんなに追及をくらってさ。あの美人は三柴の彼女か?って。」
「…」
それは初耳だ。
美紅は三柴に視線を向ける。
「もちろん、ちゃんと否定してくれたんだよね?」
美紅が詰め寄ると三柴がふんと鼻を鳴らす。
「俺が何か言う前に、こいつが否定しやがった。ただの同級生だとか言って。」
「どうもありがとう。」
「お安い御用で。」
美紅がすかさずお礼を言うと、清宮が恭しく頭を下げる。その仕草に思わず笑ってしまった。
顔を上げた清宮と視線が絡み、自然とお互いに笑みがこぼれる。美紅は清宮との距離がぐっと縮まったことを感じた。
「なんだよ、それ。」と不服そうな三柴が、タイミングよく通りかかった店員を呼び止める。
オーダーを済ますと、すぐに三人の元へとビールが運ばれてきた。
「かんぱーい。」
こうやって改めて見ると、私服姿の清宮はスーツを着ていたこの前とは少し雰囲気が違う。そこに妙な若さを感じた。大学生だと言っても違和感なく受け入れられそうだ。
そう思ってから、美紅は「あっ!」と声を上げる。
「ひょっとして、清宮くんて…私達より若い…?」
「何を今さら。当たり前じゃん。清宮は俺と違って二浪なんてしてないんだから。」
「そっか。そうだよね…どうりで若く見えるはずだ。」
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