第二章 

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三柴は呆れたように説明してみせたが、その事実が美紅の頭からすこんと抜けていた。 三柴と同期入社というだけで、勝手に自分たちと同い年だと思い込んでいたが、それは思い違いだ。三柴が二浪しているということは、清宮は美紅たちよりも二歳若いはず。 つまり清宮はまだ、二三歳、もしくは二二歳。若く見えて当然だ。 「…俺、そんなにガキに見える?」 清宮が渋い顔をして美紅を見た。 その眉間のシワに美紅は驚き、少しうろたえる。 え?なんで、不機嫌? そんな失礼なことを言ったっけ? どうやら美紅が何気なく口にした「若い」という言葉は、清宮の中で「子どもっぽい」と変換されたらしい。 美紅は慌てて「違う!違う!」と顔の前で手を振って訂正する。 「『ガキ』じゃなくて、『若い』。ほら、三柴くんにはないフレッシュさがあるってことだよ。」 そして「ね?」と三柴に同意を求めた。 「そんな失礼極まりない同意を俺に求めるってどうよ?」 言われてみれば、その通り。美紅は、あははと笑ってしまった。 美紅の笑顔に清宮の眉間からもシワが消えた。 「確かに三柴より若く見えるってのは、間違いない。三柴は俺ら同期にしばじいって呼ばれてる。」 「しばじい?爺さん扱い?」 確かに三柴のどこか気怠そうなこの雰囲気は、多少、若々しさに欠けていることは否めない。 実際、同期の皆よりも年上なわけだし、そこをからかわれてニックネームをつけられたことは容易に想像がついた。 「そうやって笑ってるけど、高梨だって俺と同い年ってことは、ばばあ扱いってことだぞ?」 恐ろしい現実を突き付けられて、瞬時に美紅が固まる。 「そうだよね…」 「いや、違うから!高梨さんは、ばばあなんかじゃない!三柴と一緒にすんな。」 何故か、清宮がものすごい剣幕で全否定してくれる。 その勢いに呆気に取られていると、先ほど注文した海鮮たちが運ばれてきた。 はまぐり、ホタテ、海老、イカ、そしてかに味噌。所狭しと並べられた魅力的な食材に、三人は一気に色めき立つ。
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