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お葬式は残された人の為にやるものだ。その言葉を初めて聞いた時、なにを言っているんだろうって思った。
お葬式は亡くなった人を見送る儀式であって、参列する私達は故人を想うものなんだって。
故人を悼み、死後の旅路が安らかにゆけるように。思い出を語って、死者への感謝を想う。それがお葬式の意味だとずっと思っていた。
だけど、この仕事に就いてから私の考えは変わった。
故人を想って泣く人や怒る人、楽しかった時を語って参列者同士で笑ったり、久しぶりの再会に頭を下げる人。本当にたくさんの人が斎場を訪れる。
主役は故人だけれど、主役がいない式。それがお葬式。人生において主役になれるのは生まれた時、結婚した時、そしてお葬式だという。
主役なのに唯一生きて参加できないのが自分のお葬式だ。そのお葬式を執り行うのは斎場で、主宰者が喪主、そしてお葬式を滞りなく行うのが私の仕事である。
家族葬が増えてきた昨今だけれど、親戚や友人、知り合いを呼ぶお葬式の需要も衰えていない、と私は思っている。毎日のように行われるお葬式に、私達は目の回る忙しさだ。
「ちょっと、柴田! あんたまた泣いて……そんな暇私たちにはないの。次の準備はちゃんと進めているの?」
「す、すみません。もう少しで終わります」
「早くね!」
「はい!!」
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