3.依頼人

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「どうかしました?」 「い、いえ!」  不思議そうに首を傾げる田村さんに笑い返して靴を脱ぐ。出された赤いスリッパを履いてフローリングの廊下を進んだ。  外から見た時は和風の家かと思ったけど、畳の部屋や襖の他に混じるようにドアがあったりと、普通の家と変わらなかった。廊下の脇には扉がいくつかあって、トイレや私室なのだと田村さんが説明してくれた。 「柴田さん、ここがあなたに主に使っていただく部屋であり、僕の作業部屋です」  最後に田村さんが案内してくれたのは家の奥にあるリビングだった。10畳くらいの広さで、部屋の窓側にはデスク、反対側にはテレビとソファがある。  奥にはキッチンが見えて、近くにはダイニングテーブルが置かれていた。椅子は2脚あるから来客用も兼ねているのかも。田村さんが椅子を引いてくれたので、緊張しながらその椅子に座る。 「お茶をお出しするので少々お待ちください」 「あ、いえ、お構いなく……」
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