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私は田村さんがキッチンに消えたのを確認してゆっくりと部屋を見回した。
1人暮らしの男の人の部屋ってもっと散らかっているかと思った。デスクの後ろにある大きな窓には白のレースのカーテンが揺れていて、さっき見えた庭が覗いている。エアコンもあるし、扇風機が首を振っていた。
ソファの上には広げたままの観光雑誌。部屋の壁際には本棚が置いてあって、難しそうな本が並んでいる。
今日からここが私の仕事場になるのかと思うとドキドキした。だって会社って感じがちっともしない。私はちゃんと仕事をやっていけるのか不安になる。
「どうぞ」
「ありがとうございます!」
テーブルに置かれたグラスには、氷が浮かんだ緑茶が揺れていた。私は田村さんにお礼を言ってからお茶を飲む。冷たくて頭がすっきりした心地になる。
「さっそくなのですが、柴田さんのお仕事の方はどうなりましたか?」
「あーえっと、駄目でした」
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