3.依頼人

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『その、母は、母方の親族との仲もあまりよくなかったんです。私もほとんど会ったこともなくて、葬儀をやることになって初めて話したくらいなんです。他人、と言うには近くても、親族と呼ぶには遠い……上手く言えないんですが、私のこともよく思ってないようなんですよね。だから本当は呼ばないつもりでした。でも、向こうからの強い要望でこのような形になったんです。打ち合わせの時に話たりしたんですけど、あまり良い印象が持てなくて』 「なにか言われたんですか?」 『私のことではなく母のことで、少し。その、母の親族は母のこともよく思っていなくて、どうせ友達もいないんだろうと馬鹿にしてくるんです。あの人達が葬儀に呼べと言ったのは、もしかしたら母を侮辱する為なんじゃないかと思ったら悔しくて……。事実、母には友達と呼べる人はいなかったと思います。父が生きていた頃は……出かけたりしていたんですけど、会社の同僚や友達とご飯に行ってるようには見えませんでした。葬儀にも呼べる人がいなくて、このままじゃ親族の言う通りになると思った時に『泣き屋』の存在を知りました。この人達に頼めば、母の葬儀が少しは報われるんじゃないかって。……すみません。全部独りよがりだと言うことはわかっているんですけど……』
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