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あっという間にお葬式当日がやってきた。
私は仕事で使っていた喪服を身に着けて田村さんとの待ち合わせ場所へと向かう。まさかクビになった仕事の服をまた新しい職場で着ることになるとは思わなかった。
斎場は私の職場とは正反対の場所にあり、繁華街と住宅街の間にあった。最寄りの交通機関が市バスしかなく、私は家の近くから30分近くバスに揺られた。
平日の昼間は車の数が多いけど、歩道を歩く人の姿はまばらだ。窓の外を見ると、太陽が照り付け、歩道の木が長い影を作っていた。
梅雨も明けて夏本番。最近は真夏が恐ろしくなるほどの暑さだ。こんな日でも田村さんは汗ひとつかいていないだろうなと思う。
田村さんとは現地集合。昨日も仕事場兼田村さんの自宅にお邪魔していたけど、今日についての詳しい話を教えてもらうことはできなかった。
「いやでも、仕事なので少しくらい教えてくれたって――」
と私が言えば、
「あなたの場合、始めから知っているよりも現場で話を聞いた方がいいリアクションしてくれると思うんですよね。現に神田さんの話だけで泣いているじゃないですか。なので、僕が作っているシナリオは当日までのお楽しみにしてください」
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