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「おばあちゃーん! ねぇ、私のゲームどこー」
「はいはい、今行きますよーっと。ごめんなさいね。孫が呼んでいるので失礼します」
廊下の奥から聞こえた子供の声に答えると、早苗さんは笑顔で去っていく。しっかりとその姿が消えたのを見計らって神田さんは大きなため息を吐いた。
「叔母がすみません……」
「いえ、お気になさらず」
神田さんは一気に疲れているように見えた。早苗さんの存在が、神田さんが泣き屋を使いたい理由。
早苗さんの言葉には、1つ1つに棘があって親しみやすさは全くない。親戚ゆえの気安さにも見えなかった。
「早苗さんが言っていたお話は、以前神田さんがおっしゃっていたことですよね?」
田村さんの問いに神田さんは頷く。
「その通りです。私と母は血が繋がっていません。亡くなった父とさえ、私には血の繋がりはないんです。両親の間に子供ができず、どうしても欲しいと願った父の願いで私が引き取られたんです。養子縁組、それを叔母を含む親族のみなさんはよく思っていませんでした。元々母は親族と仲が良くなかったのですが、私をきっかけにどんどん悪化して――」
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