4.大切な人

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「田村さん、どうして途中で止め……え?」 「どうかしました?」 「あ、いえ、なにも」  隣を見上げて驚いた。田村さんの端正な顔から黒ぶち眼鏡が消えていたのだ。すぐに頭のところに掛けてあるのを見つけたから、一時的なものだとわかる。  わかるけど、眼鏡なしの顔面破壊力は凄まじい。目力がすごい。  垂れ目なのに視線が合うだけでドキリと音を立てる心臓。  この人は周囲の人間の為に眼鏡を掛けているんじゃないかと思ってしまう。 「さっきの神田さんの話ですけど、それはあとで僕の口から説明させてもらいます」 「と、いうことは『親族を泣かせる為のシナリオ』と関係があるということですか」 「はい。神田さんのお話を聞いて僕なりに色々調べてわかったことがあるんです。その話は、親戚の方たちがいる場で話した方が効果的かと。なので、それまで柴田さんには待って欲しいのです」 「そういうことでしたら、はい。気になりますけど、その時まで待ちます」  神田さんが『泣き屋』を利用したもう一つの目的。その話を聞いた時、私はどう思うのだろう。
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