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「おじさん……」
よく通る声に顔を上げると、お焼香を終えた1人の男性が席に戻ると同時に顔を両手で覆っていた。隣にいたおじさんが心配するように男性の肩に手を置いた。
「おじさんにはとてもお世話になったんです。両親を早くに亡くした僕を気遣って、本当の父親のように接してくれて。それに僕はどれだけ救われたか。僕はおじさんに恩返しがしたかった。なのに……こんな、早すぎます……」
小声なのにスッと耳に入る声。男性の周りの人達から鼻を啜る音が大きくなった。肩に手を置いていたおじさんは空いた手で目頭を押さえている。
私は遺影を見た。白髪まじりで笑顔のおじさんは見た目は60代くらいに見えた。
もう一度男性へと視線を向ける。男性がちょうど両手を離したところで、頬に涙がつたうのが見えた。
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