5.家族

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 静かにお葬式は進んでいった。自分が参列者の立場としてお葬式に来るのは、なんだかんだ初めてかもしれない。  私の家族は両親、その祖父母に至るまで健在だ。たまに親戚のお葬式にお母さんが行ったりするけれど、私自身が行くことはなかった。  神田さんは火葬の時も、涙一つ見せずにお母様を見送っていた。  火葬が終わるまでの時間、親族の人達と同じ待合室へと通された。神田さんと親戚の人達との間で会話はなく、親戚の人達はさっさと配れたお弁当を手に席についていく。  待合室は20人くらい入れそうなくらいの広さで、部屋の奥から長いテーブルが左右に分かれて5つずつ並べられ、椅子が均等に配置されていた。会議室のようなシンプルな部屋という印象だ。  早苗さんは娘さんだろう神田さんと同じくらいの歳の女性の隣に夫婦そろって座り、向かいにはたぶんさっき早苗さんを呼んだであろう小学校低学年くらいの女の子が携帯ゲーム機で遊んでいる。
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