5.家族

4/23
前へ
/75ページ
次へ
 私と田村さんは入口から近い席に2人並んで座っている。いただいたお弁当の蓋は閉まったまま。  田村さんはスマホを操作しているから私は手持無沙汰だ。お腹が空いたからお弁当を食べようかな、なんて思ったけれど、一応仕事中だ。  スマホを見るふりをして早苗さん達の様子をこっそり伺っている。 「すみません。お待たせしました」  神田さんがスタッフの人との打ち合わせを終えて戻ってきた。いいえ、と答えると、田村さんがスマホをテーブルに置いた。 「では神田さん、そろそろ始めようと思うのですがいいでしょうか」 「はい。よろしくお願いします」  神田さんの表情が引き締まる。私も背筋が伸びた。田村さんの泣き屋の仕事を見るのはこれで2回目。どうやって話を持っていくのかとドキドキする。 「まずは神田さんにこれを見て欲しいのですが」
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加