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田村さんがテーブルの上のスマホの画面を、神田さんに見えるように表にする。神田さんは頷きながら恐る恐る画面を覗き込んだ。
私もいったいなにが映っているのか気になり、神田さんの邪魔にならないように隣からそっと覗きこむ。そこに映っていたのは、ブログのようだった。
黒の背景に白の文字で日付が羅列されていた。人に見せる為に作られたブログには見えない。
「これは……?」
「ある方のブログです。閉鎖されていなかったのでそのまま残されていました。どこでもいいのでブログを読んでいただいてもいいですか」
「あの、これが『泣き屋』のお仕事と関係あるんですか? そんなに時間はないんですけど」
「あります。神田さんも読めばわかります」
怪訝な顔をする神田さん。少しだけ苛立っているように見えた。神田さんは頬にかかる髪を耳に掛けると、田村さんのスマホを手に取り、画面の一番上にある日付をクリックした。
日付だけでタイトルは一切ないシンプルなブログ。神田さんは私にも見えるように画面を見せてくれた。書かれていたのは10年前の日付だった。
黙って文章を読んでいた神田さんは、スクロールするにつれて指先が震えていく。
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