5.家族

7/23
前へ
/75ページ
次へ
「ねぇ、千代ちゃん聞いてるの? 無視はよくないんじゃな……」  早苗さんの尖った声が不自然に止まる。それでも何も返さない神田さんを不思議に思って隣を見て、私まで言葉を失った。 「おか……あさん」  神田さんはぐすっと鼻を鳴らして嗚咽をもらす。え、どういうこと?   田村さんはまだお話してないし、ということはブログが原因ってこと?   田村さんに助けを求めて視線を送るも、すましたままで全然あてにならない。私も泣けと……? いや、さすがによくわからないから無理だよ。  すると、田村さんが神田さんと早苗さんの間に立って、悲し気に顔を伏せた。 「……神田さんに見てもらったのは、香奈さんの生前の日記です」 「日記? あの子はそんなマメなことをするような子じゃ……」 「早苗さん、あなたは香奈さんのことをよくご存じだったんですか」 「当たり前じゃない。妹のことはなんでも知っているわよ」  声を荒げた早苗さんを目を腫らした神田さんが睨みつけた。
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加