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「……おばさんは、母のことを何も知らない。……私も、知らなかった」
「どういうこと？」
「ここからは、私が。私は香奈さんと仕事をしているうちにいろいろな話をさせてもらいました。それは、私も兄弟と上手く関係を築けないという話をしたのがきっかけだったと思います。あまり自分のことを語る人ではありませんでしたが、香奈さんは優秀な姉と平凡な自分とで劣等感を抱いていたようです」
「そんなこと……」
「知らなかった、とは言えませんよね？ 事実、姉であるあなたは一心に両親から愛情を受けて育ち、反対に妹である香奈さんは放置されていた。愛情を掛けられたことがない香奈さんは人の愛し方がわからなかった」
早苗さんはそれでも何か言いかけたが、田村さんの一蹴に怯んだようだ。
「香奈さんは自分の気持ちを吐き出す為にこのブログを始めたようです。最初の日付は、香奈さんが小学生の頃になっています。非公開になっているので、誰にも見えることはない。だから、きっと本心を書くことができたんだと思います。香奈さんはブログを心の拠り所にして生きてきた。そして、旦那さんに出会い、初めて愛されるということを知ったそうです」
香奈さんが旦那さんと会ってからのブログは幸せに溢れていたと、田村さんは言う。
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