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「結婚するまでは幸せだったようです。旦那さんは子供が好きで、香奈さんもそれを望んだ。しかし、それは叶わなかった」
神田さんがハッと顔を上げた。これは神田さんが言っていた話に繋がる。
子供を授かれなかった2人は、旦那さんの強い要望があって、神田さんを、千代さんを娘として養子に迎えた。
「早苗さん達ご家族はひどく反対したようですね、どうしてですか?」
「どうしてもなにも……」
早苗さんは言いよどみ、千代さんに視線を向けた。
「誰の子かもわからない人間を親族として迎えるのが嫌だったのよ」
「早苗、言葉がすぎるぞ」
旦那さんに苦言を呈されても、早苗さんは鼻を鳴らすだけだ。千代さんもショックを受けたようには見えない。
もしかしたら、薄々わかっていたのかもしれない。早苗さんの言葉にはいつも棘が含まれているようだったし。
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