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けれど、私は状況よりも男性へと意識が向いてしまう。
なんて、綺麗な人だろう。
黒髪と色白な肌。黒ぶちの眼鏡では男性の端正な顔を隠しきれていなかった。
眼鏡の奥の瞳が潤んでいるのまで見えて、私は視力が上がったんじゃないかと思うほど。
男性の近くにいた人達も、そこで初めて目に入ったかのように、白いハンカチを目元にあてる男性に見惚れていた。いつもと違う式の様子に私は息を呑んだ。
「柴田! ぼさっとしない!」
「あ、はい!!」
ついに先輩から小声の雷を落とされる。私は背中にものさしを入れられたかのように直立すると、すぐに走り出した。
その私のことを、睨みつけている人がいたことを知らずに。
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