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「ですが、早苗さん達は、子供のできない香奈さんのことを『出来損ない』だと言っていたんですよね。子供がいて初めて大人として一人前だと。だから、最初は養子を迎えることに消極的だった香奈さんも合意したんでしょう」
それは……それを聞いて千代さんはどう思うのだろう。
母娘の仲は良くなかったというし、もしもその話が本当なら体裁の為に香奈さんは千代さんを迎え入れたということになる。その真実に、千代さんは傷ついたりしないのだろうか。
胸が痛い。私は親が誰かわからないという状況がわからない。生まれた頃から両親がいて、可愛がられたと思う。
だから、もしかしたら愛されていなかった、なんて聞いたら胸が痛くてどうしたらいいのかわからなくなりそうだ。
「まあ……香奈は本当に『出来損ない』の子だったのね。そんな理由で養子を迎えていたなんて。千代ちゃんまで巻き込んでごめんなさいねぇ。あなたには辛い想いをさせたわ」
「……やめてください。それ以上言わないでください!」
思わず早苗さんの目の前に飛び出したのは、もう反射だった。悲しそうな顔をする千代さんを見ていられなかった。
田村さんがどんな意図をもってこの話題を持ち出したのかわからないけれど、香奈さんや千代さんを侮辱する言葉を止めさせたかった。
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