5.家族

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「なによ。私は思っていたことを言っただけ。あなたは部外者でしょ」 「そうかもしれません。ですけど、香奈さんの真意は香奈さんにしかわからない。それを早苗さんの憶測でこれ以上言う必要もないと思うんです」 「はあ……?」  自分でも余計なことだとわかっている。なんなら『泣き屋』の仕事を妨害しているのかも。  でも、千代さんと香奈さんのことを思うと、目が熱くなってしまう。さっき見た、ブログの内容が頭に浮かぶ。香奈さんの真意は打算だけではなかったはずだ。 「早苗さん、まだ話には続きがあります。香奈さんが、子供を迎えることで自分が一人前の大人になれると思ったのは本心でしょう。愛情のかけ方がわからず、旦那さんに間に入ってもらいながら神田さんとの関係を築いていたとも書いてありました。ですが、香奈さんは千代さんのことを心から大切に思っていたのも事実です」 「なにを言って――」 「おばさん、このブログには父が亡くなった時のことも書かれていたんです。父方の親族とも折り合いが悪くて、養子の私に対していい感情を抱いてなかった。私の目の前で、平気で私を養子だと笑っていたそうです。……母が父方の親族と縁を切ったのも、母自身の家族や親族を遠ざけたのも……全部、私の為だった……」  千代さんは顔を両手で覆って嗚咽をもらした。私は千代さんを支えるのと同時に、耐えていた涙が零れた。
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