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「香奈さんは自分が愛されたことがなかったから、どうすれば愛せるのかわからなかった。だから、間違えてしまったんです。まだ幼かった神田さんに、心無い言葉が聞こえないように親族を遠ざけて、神田さんになんて説明をすればわからないから、神田さんも遠ざけてしまった。近くにいなければ、娘が傷つくことがないと思ったんでしょう。神田さんと離れて暮らすようになってからの日々は、毎日のように神田さんを想う言葉で溢れていました。香奈さんは不器用ながら、神田さんを愛していたんですよ」
「言ってくれなきゃ、わからないよ……」
ついに泣き出してしまった千代さんに、私はハンカチを渡した。千代さんはやっと、香奈さんを想い、泣くことができたのだろう。
「だからと言って、私にはなんの関係も……」
「まだ、わからないんですか」
私は早苗さんを見た。千代さんが泣いていることに動揺しているように見える。
私はブログや田村さん、千代さんの話を聞いて思ったことがある。
香奈さんは愛されたことがないから、愛し方がわからなかった。
だけど――
「香奈さんが養子を迎えたのは、旦那さんの想いもあってだと思います。ですが、それは早苗さんに……ご家族にも一人の大人として認めてもらいたかったからじゃないんですか」
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