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「そんなこと……」
「これを見てください」
早苗さんは相当頑固だ。だから、見せればわかるかな。私は千代さんが持っていた田村さんのスマホを操作して早苗さんに見せた。
おずおずとスマホを見た早苗さんは大きく目を見開いた。そこには、ワード検索で早苗さんのことが書かれてある記事の一覧が映し出されていた。
タップとスクロールを繰り返す早苗さんの目は赤くなっていく。
「どうして……こんな……だって、一度も、そんなこと……」
「早苗さんは、香奈さんのことをわかったつもりで何も知らなかったんですよ。香奈さんは、千代さんや旦那さんと同じくらい、いつも早苗さん達家族のことも想っていたんです。素直に口に出せないから、誰も見ていないブログでしか本心を語ることができなかったんです。これを読んでも、香奈さんのことを出来損ないと言えますか?」
「ご、ごめんなさい……香奈、ごめんね……」
早苗さんの両目から涙が溢れた。濃すぎるメイクをなぞり、黒い涙が頬をつたう。早苗さんにハンカチを差し出しながら田村さんが静かに言う。
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