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「田村さん、柴田さん。本当にありがとうございました」
千代さんが挨拶にやってきてくれた。千代さんの表情は晴々としていて、葬儀の前とは別人のようだった。まだ目が赤いままだけど、笑顔の千代さんに私も笑い返した。
「お二人のおかげで母との思い出をちゃんと胸にしまうことができそうです」
「それはよかったです。付き添いは必要ですか」
「いえ。あとは私一人で大丈夫です。おばさんやおじさん達ともお話してみようと思います」
千代さんはバスを振り返り、また私達にお礼を言った。
「本当に、感謝しています。私、母のことなにもわかっていなかったんですね。あんなにそばにいたのに、母の気持ちを田村さんに教えていただくまで気づきもしなかった。生きている頃に気づけたらと、正直に言えば思ってしまうんです」
「千代さん……」
私は顔に出してしまったのだろう。大丈夫だろうかと心配すると、千代さんは明るく笑ってくれた。
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