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「お宅のスタッフはどうなってるんだ!」
参列者が帰宅し、親族だけになった斎場に太い怒号が響き渡った。窓の外はとっくに日が落ちて、時折道路を通り過ぎる車の音だけが聞こえてくる。静けさのなかでその怒号は耳を貫いた。
「お父さん、別にいいでしょう。この方はわざと泣いたわけじゃないのよ」
「わざとが問題だと言ってるんじゃない。こっちは金を払ってるのに、ちゃんとしたサービスを怠ったことに腹を立てているんだ」
「でも……」
「おまえは下がってろ。おい。柴田とか言うやつを出せ」
「申し訳ございません鈴本様。わたくしがお話を伺いますから――」
「柴田を出せ!!」
先輩が必死に今回のお客様である鈴本さんを宥めてくれている。
鈴本さんは遺影のおじさんの弟さんで、この斎場を経営している会社の社長の知り合いだとさっき他のスタッフから教えてもらった。
どうしてこうなっているのかといえば、私が式の間中ずっと泣いていたことが鈴本さんの逆鱗に触れてしまったらしい。
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