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「私、もっと努力します……」
「なにを言っているんですか。柴田さんはそのままで十分有能ですよ」
「は、はは……」
有能という言葉じゃ足りない人間に言われても、なんの説得力もないと思うの。
乾いた笑いしか出ない私を誰か慰めて欲しい。ちらりと田村さんの横顔を盗み見る。横顔もイケメンだ。ちょっと癒された。
「では、仕事も完了したことですし、なにか食べにでも行きますか」
「賛成です!」
結局、出されたお弁当を食べる暇もなく、もうすぐおやつの時間だというのに何も食べていない。気づくと途端にお腹の虫が鳴きだした。
「柴田さんはなくのが上手いですね。さすがです」
「それは……褒めているんですか、からかっているんですか」
「どちらだと思いますか」
これは……からかってる? ああ、もうわからない。お腹が空いた!
「オムライスを所望します!」
「了解しました。では、おすすめのお店があるのでそちらに行きましょうか」
並んで歩く帰り道。今までは葬儀で泣けば、自分の至らなさに落ち込んでいたのに、今日は晴々とした気持ちだ。
泣き屋という未知の世界で私がやっていけるかは不安だけど、田村さんと一緒ならそれなりにやっていけそうだと思った。
了
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