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和式長のシックな部屋が舞ちゃんの部屋。
舞ちゃんに炬燵に入るようにと促された私と一如は、いそいそと炬燵に入る。
普段は入れさせてもらえない舞ちゃんの部屋は、他の部屋よりもシンプルでいてきちんと整えられている。
「よく聞いてね?私、引っ越すことにしたの」
舞ちゃんは意を決してそう告げた。
「へ?」
「は?」
私と一如は同時にキョトンとしていた。
なぜなら常日頃、舞ちゃんは、同居の方が楽だから一生、家族と暮らすと言っていたからだ。
「な……なんでまた急に?」
私は驚きながらそう舞ちゃんに訊いた。
「もう無理。耐えられないの。……この家、汚すぎて私のメンタルがやられちゃうから、だから……」
「そんな!!だったら他の部屋も舞ちゃんが掃除してインテリしたらいいじゃん?」
「無理。『他人』が触ったところは触れない。気持ち悪いの」
「他人って……」
私は衝撃的な舞ちゃんの発言にかなりショックを受けて、これ以上、何も言えなかった。
「気持ち悪い、ね?いいだろう。引っ越せば?」
一如はそう一言、言って舞ちゃんの部屋を出ていき、お風呂に入ってしまった。
残された私は目眩がおきそうなのを我慢して、舞ちゃんの話を聞き続けた。
もう既に引越し先は決まっていること。
ガス・電気が通ったら出ていくこと。
今まで使っていた自分の家財道具は新調するから全て、いらないこと。
舞ちゃんは無表情で淡々と私に語った。
暫しの沈黙が続いた。
私は舞ちゃんの顔って、こんな顔だったっけ?と現実逃避をしていた。
「1月の初めには出ていくから。お母さん?聞いてる?」
「う、うん……」
真っ直ぐで澄んだ瞳の舞ちゃんに見つめられると、私は、自分が穢れている存在のように感じてしまい、舞ちゃんの視線から逃れるように座る場所を移動した。
その時、襖の向こうから、
「アタック、25〜〜〜〜♪♪」
と歌う、愉しげな翔太の歌声が聞こえた。
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