第1章 無気力の淵から

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第1章 無気力の淵から

 3月31日、午前11時50分現在。明人は、ゴミが散らばった薄暗い部屋の片隅で飲みかけのビールを持ちながら、パソコンに向かっていた。コロナ禍で失業し、すでに3年が経過。40歳になった明人は、かつての自分を取り戻そうと奮闘していた。ネットで検索した求人に応募、数日経ったら面接。まるで工場のライン作業のような一日を送っていた。  約3年という長い年月が経ち、働く気が失せつつあった明人は、いつの間にか自爆自棄に陥っていた。髪は乱れ、口の周りには長く伸びた髭が生え揃っている。  明人は、「こんな人生でいいのか...」という思いが頭をよぎるが、すぐに消えていく。ビールを飲み干し、やけになっていた。    「くそっ...なんでこんなに上手くいかないんだよ」    とつぶやきながら、パソコンの前でEnterキーを押す。パソコンの画面に映っていたのは、Twitterの画面で時刻は12時2分を指していて、その後の記憶はなかった。   翌朝、Twitterのコメント欄を開くと、「冗談だろ?」というコメントが溢れていた。自分が馬鹿にされたように感じ、怒りが込み上げてくる。まるでお前は何も行動できない奴だと直接、言われているような感覚に陥いた。 「あ~冗談じゃねえーよ。大学を爆破するって言ってんだろ。何で誰も信じねーんだよ。ったく無職だからって馬鹿にしやがって」  明人は、昨夜の行動を反省しながらも、社会からの孤立感と無力感に苛まれていた。明人が持っていたのは、BB弾を詰めたリアルなおもちゃの銃。それを手に、爆破予告した大学へ向かった。
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